2019年8月
俳句アトラス
『修二会』は渡辺政子(1943 - )の第1句集。序文:朝妻力。
著者は「春耕」「晨」同人。
新涼の森へ押しゆく乳母車
行く春の版画にたどる関所跡
修二会果て矢来の竹の堆し
雨乞の大蛇に藁の匂濃し
地蔵会のゆふべの生飯の乾び初む
寒明の寺に解かるる鉄パイプ
乳牛におからの届く寒露かな
底冷えの奈良太郎撞く丙夜かな
春雪を肩に勅使の通り過ぐ
人容れて暮れゆく花の天守閣
民宿のハンガーに干す屑若布
御神火に年立つ大和一の宮
大仏のぬぐはれ秋の立ちにけり
十六夜の鹿迷ひくる裁判所
陀羅尼助本舗を出づる花衣
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。