Quantcast
Channel: 閑中俳句日記(別館) -関悦史-
Viewing all 1793 articles
Browse latest View live

【十五句抄出】野間幸恵『ON THE TABLE』

$
0
0

野間幸恵『ON THE TABLE』(句集)2019年4月
発行:TARÔ冠者(私家版)


 『ON THE TABLE』は野間幸恵(? - )の第4句集。

 著者の来歴・所属等は記載なし。

 

目を閉じて耳を開いてブルーチーズ


そこここに鯵の開きはみどりなり


神秘など遠歩きする白い黴


メタフィジカル律儀な鼻であるための


流砂かなユリカモメなる音感で


完全な鼻梁とおもうナイル川


椋鳥に波立つロマンロランかな


面積の壊れるシーラカンスかな


白い月バルサミコ酢に戻れない


広島を去る階段が終わらない


コンパスや象の中にも海がある


始祖鳥はピアノの一番高い音


老人が誤読のように立ち上がる


遠くにはいないネアンデルタール人


半分はポルノで埋まる六角形

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 


【十五句抄出】新谷壯夫句集『山懐』

$
0
0

新谷壯夫『句集 山懐』2019年6月
俳句アトラス


 『山懐』は新谷壯夫(1941 - )の第1句集。序文:柴田多鶴子。

 著者は「鳰の子」同人会長。

 


大方は裏返りたり朴落葉


残る雁津波の上を飛び惑ふ


取り損ね壺焼の腸覗きけり


台風の曲り角なる離島かな


真つ新の的の据ゑられ弓始


淹れたてのコーヒー匂ふ登山小屋


寝転んでアイガー仰ぐお花畑


万緑や吊橋渡る順きまる


消しゴムの具合も試し大試験


内陣の音のみ聞こゆ修二会かな


行宮の栄え短し木下闇


天牛は虫の貴公子髭にも斑


美味しいは美しきこと牡丹鱧


外に漏れ来パイプオルガン月涼し


初晴や地を滑りくる鳶の影

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

「トヨタマヒメはかえったんだよ―宮崎神話旅―」(2019年5月)

$
0
0

「トヨタマヒメはかえったんだよ―宮崎神話旅―」 「トヨタマヒメはかえったんだよ―宮崎神話旅―」(2019年5月)から。

 「釣り針をさがし隊」による宮崎旅行詠の冊子。頒価400円。

 メンバーは神野紗希、小島なお、東直子、平岡直子、三浦しをんで、全員が短歌と俳句両方を制作。

 

 

 

 

 

「この島の砂は貝です」風光る   神野紗希


産声を空は忘れて春の波

 


生きる時間終えてもつづく待つ時間 甲羅の上に波は届かず   小島なお

 


一度きりのわたくしたちの野焼かな   東 直子

 


鮫を食べないあなたの腕をなんどでもずり落ちてくる赤い袖口   平岡直子


太陽やモアイが顔で青き踏む

 


ただ俺はおまえになりたかったのだ海によく似たまぶしいおまえ   三浦しをん

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドミタス」第4号(2019年4月)

$
0
0

「ドミタス」第4号(2019年4月) 「ドミタス」(編集:武田肇)第4号(2019年4月)から。

 詩、短歌、俳句混在の詩誌。俳句は渋川京子、武田肇のみ。

 

 


中天の渚より湧く春の雲   渋川京子


百人の顔流れゆく青葉木菟


月光のほかは通さぬ白髪かな

 

 


春愁やあなたの横の渦が我   武田 肇


   上海某所
秋日さす最上階の角部屋に


星合ふ夜われと鏡が留守居かな


見失ふいつもの道に山櫻

 

 

 

 

 

 

 

「秋草」2019年6月号

$
0
0

「秋草」2019年6月号 「秋草」(発行編集:山口昭男)2019年6月号から。

 

罫線の狭き便箋春の海   山口昭男


菜の花や木箱にならぶ饂飩玉


貝は水つぎつぎ飛ばし雛の家   丸山せんかう


草餅や暖簾の奥の長返事   赤城喫茶

 

 

 

 

 

 

 

 

【十五句抄出】岩片仁次編『高柳篤子作品集』

$
0
0

岩片仁次編『高柳篤子作品集』2019年5月
発行:夢幻航海社、発売:鬣の会


 岩片仁次編『高柳篤子作品集』は高柳篤子(1930 - )の作品集。詩、散文を含む。限定500部。「書信抄+解説風略伝」:岩片仁次、解説:林桂。

 高柳篤子は編著者によると《本名は山本篤子、はじめは山本緋紗子と称し、ついで山本あつ子、高柳篤子。高柳重信と離婚後、広岡まり》《本作品集収録の大部分は、高柳篤子期の稿である》とのこと。

 

 


香から蠅ひそと飛び言葉あり


ドングリ喰べて死んだふりする泪が出る


死ぬ真似すれば「お祭り」みたいに 乳房が痛む


机の下にもぐり込み全身の肌目にむらがる戀


両足の爪に顔を書きなんとなくにらみぬ


だんな様(尻尾はながいのです)苦しいのです


猫の尻尾は 鉛筆けずり 野原でまわせ 野原でまわせ


空から こぼれるネックレス あたしがさわると雨になる


ガラスなら百十八枚だな 實にかなしい あたしの體


僕 尻尾ほしいな 猫 山羊 雲の尻尾


えらい人のまわりはべたべたします・だからさようなら


恥かしい背中おじゃまよ全部で20人ですね


生れるまえ、ジュネーブで犬をしたり、モスクワで山羊もしてたの


殺すときは花火だとか映画、新しいサンダルよサンダルよ


鼻からハコベ、瞼に蝶々、ドロボーよ入っておくれ

 

 

 

※本書は版元より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

【十五句抄出】野間幸恵『ON THE TABLE』

$
0
0

野間幸恵『ON THE TABLE』(句集)2019年4月
発行:TARÔ冠者(私家版)


 『ON THE TABLE』は野間幸恵(? - )の第4句集。

 著者の来歴・所属等は記載なし。

 

目を閉じて耳を開いてブルーチーズ


そこここに鯵の開きはみどりなり


神秘など遠歩きする白い黴


メタフィジカル律儀な鼻であるための


流砂かなユリカモメなる音感で


完全な鼻梁とおもうナイル川


椋鳥に波立つロマンロランかな


面積の壊れるシーラカンスかな


白い月バルサミコ酢に戻れない


広島を去る階段が終わらない


コンパスや象の中にも海がある


始祖鳥はピアノの一番高い音


老人が誤読のように立ち上がる


遠くにはいないネアンデルタール人


半分はポルノで埋まる六角形

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

【十五句抄出】新谷壯夫句集『山懐』

$
0
0

新谷壯夫『句集 山懐』2019年6月
俳句アトラス


 『山懐』は新谷壯夫(1941 - )の第1句集。序文:柴田多鶴子。

 著者は「鳰の子」同人会長。

 


大方は裏返りたり朴落葉


残る雁津波の上を飛び惑ふ


取り損ね壺焼の腸覗きけり


台風の曲り角なる離島かな


真つ新の的の据ゑられ弓始


淹れたてのコーヒー匂ふ登山小屋


寝転んでアイガー仰ぐお花畑


万緑や吊橋渡る順きまる


消しゴムの具合も試し大試験


内陣の音のみ聞こゆ修二会かな


行宮の栄え短し木下闇


天牛は虫の貴公子髭にも斑


美味しいは美しきこと牡丹鱧


外に漏れ来パイプオルガン月涼し


初晴や地を滑りくる鳶の影

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 


「トヨタマヒメはかえったんだよ―宮崎神話旅―」(2019年5月)

$
0
0

「トヨタマヒメはかえったんだよ―宮崎神話旅―」 「トヨタマヒメはかえったんだよ―宮崎神話旅―」(2019年5月)から。

 「釣り針をさがし隊」による宮崎旅行詠の冊子。頒価400円。

 メンバーは神野紗希、小島なお、東直子、平岡直子、三浦しをんで、全員が短歌と俳句両方を制作。

 

 

 

 

 

「この島の砂は貝です」風光る   神野紗希


産声を空は忘れて春の波

 


生きる時間終えてもつづく待つ時間 甲羅の上に波は届かず   小島なお

 


一度きりのわたくしたちの野焼かな   東 直子

 


鮫を食べないあなたの腕をなんどでもずり落ちてくる赤い袖口   平岡直子


太陽やモアイが顔で青き踏む

 


ただ俺はおまえになりたかったのだ海によく似たまぶしいおまえ   三浦しをん

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドミタス」第4号(2019年4月)

$
0
0

「ドミタス」第4号(2019年4月) 「ドミタス」(編集:武田肇)第4号(2019年4月)から。

 詩、短歌、俳句混在の詩誌。俳句は渋川京子、武田肇のみ。

 

 


中天の渚より湧く春の雲   渋川京子


百人の顔流れゆく青葉木菟


月光のほかは通さぬ白髪かな

 

 


春愁やあなたの横の渦が我   武田 肇


   上海某所
秋日さす最上階の角部屋に


星合ふ夜われと鏡が留守居かな


見失ふいつもの道に山櫻

 

 

 

 

 

 

 

【十五句抄出】『俳句の宙 2018―精選アンソロジー』

$
0
0

本阿弥書店編集部編『俳句の宙 2018―精選アンソロジー』2018年12月
本阿弥書店


 『俳句の宙 2018―精選アンソロジー』は編者表記なしのアンソロジー。14名100句ずつを収録。

 以下、概ね各人1句抄出。

 

 

山々をこつんとはがし冬満月   赤根雅雄


煙突の空高すぎる秋思かな   石垣みち代


よく眠る市民ですプラハに満月   伊藤道郎


近道は踏切二つ夏の草   加山紀夫


少年の戸口に立てり雲の峰   加山紀夫


白木蓮かかときれいな母でした   工藤 惠


直木賞の平積み書籍雲の峰   佐藤和子


らふそくの明かりの宴避暑館   柴﨑加代子


存在が光を放つ新入生   柴田直美


逆縁の娘の夏服の捨て所   鈴木真春


花守のごとく交番灯の朧   髙橋 薫


炬燵ぶとん四隅正して客迎ふ   中條弘子


何もかもよく見えすぎて春の闇   平林 良


寒灯や柩に入るる世界地図   村松道夫


雑煮膳亡夫の席に長子ゐて   渡辺佳子

 

 

 

※本書は参加者加山紀夫氏より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

【十五句抄出】織田春美句集『初音』

$
0
0

織田春美『句集 初音』2019年6月
朔出版


 『初音』は織田春美(1933 - )の第1句集。序文:友岡子郷。

 著者は「郭公」創刊同人。

 

緋縅の具足の並ぶ寒さかな


人日の雨静かなり昭和果つ


靄晴るる賤ヶ岳より初音かな


忽と死のあり春宵に瞑る父


彗星を見む沈丁の闇の中


みささぎは風の音のみ初桜


零余子蔓引けばこぼるる一の谷


はまゆふや河口堰より霽れてきし


   深悼 飯田龍太先生
甲斐駒に雪のかがやく訣れかな


ほとけ百体雪雲は比叡より


一瀑のこだまを返す鰯雲


灯台に灯の入りたるかぶら鮨


かたつむり大和三山はるかにす


青空の見えゐて雨の濃あぢさゐ


桑いちご熟れみづうみの真珠柵

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

【十五首抄出】江田浩司歌集『重吉』

$
0
0

江田浩司『歌集 重吉』2019年6月
現代短歌社


 『重吉』は江田浩司(1959 - )の歌集。

 著者は「未来」編集委員。

 

はるの風くさにすわりてふかれつつ神よとほそい枝につぶやく


もののはじめくさはならんで吹かれつつよわよわしげに光つてゐたか


ひとすぢの道のしろさよふく風にひとつの影が立つてゐるかも


はるの宵よろめいてゆくひとの世をくるしんだだけ終(つひ)はあかるし


けへもまた力をいれず生きてゆくしろい雲さへあればいいのだ


はるのひのしづかな昼につかれたりとほくにあるは悦びだらう


おほきな木あかるい月にふれさうでこころのそこはやすらかにあれ


いつぽんの釘をつかみてのぼるかな楡の大樹にたてたる梯子(はしご)


ゆふぐれになにかをひらくみづの音くろずんだ木を見あげてゐると


うかびくるキーツの詩(うた)はうつくしくわたしむねは空につづけり


雨をみてをどりたくなる人あらば花をひと束あげてください


いたづらに生きてゐたいといふ人にあきのはじめの空はひろい樹(き)


「森のような詩がつくりたい」とあなたはいふうすい日のさす冬のはじめに


うらがはに黯(くろ)いところがすこしあるふゆの雲からひかりがもれる


もうずつとあなたに話しかけてゐたやすらかな死はふゆの顔から

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

「港」2019年6月号

$
0
0

「港」2019年6月号(終刊号) 「港」(発行:衣川次郎、編集:伊藤修文)2019年6月号から。

 名誉主宰大牧広が死去し今号で終刊。

 


妻が来て帰りて泣きしほととぎす   大牧 広


   祝 蛇笏賞受賞
じつくりと冷酒を上ぐ真夜の卓   衣川次郎


格差いま階級となり黄沙降る   堀口曄子

 

 

 

 

 

 

 

「セレネッラ」第19号(2019年6月)

$
0
0

 ネットプリント誌「セレネッラ」(編集:中島葱男)第19号(2019年6月)から。

 


緑蔭に憩ふ白衣の実習生   金子 敦


夏館すべての耳が砂となる   中山奈々


白南風やマイトレーヤの手印より   中島葱男

 

 

 

 

 

 

 


【十五句抄出】乾佐伎句集『未来一滴』

$
0
0

乾佐伎『句集 未来一滴』2019年8月
コールサック社


 『未来一滴』は乾佐伎(1990 - )の第1句集。

 著者は「吟遊」会員。

 

好きという一語でできた銀河系


寒昴感じるための別れです


冬空の青さに二人立ちすくむ


君思えば無人の駅に積もる雪


パンジーはさよならがない街に咲く


芝桜どこかに私の道がある


ネモフィラの青へ大空帰ってゆく


紫陽花咲いて私は雨にも傘にもなる


ザク切りのキャベツ君に会いたい


ハローウィーンまっくらやみに飴一つ


金木犀の香を食べたいか猫が鳴く


白ヤギは大きなツノで月を呼ぶ


八月から九月へ白いドレス着て


君は笑い私の羊はよく眠る


ゆめの中いろんなかたちがうごいてる

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

「祭演」NO.56(2019年6月)

$
0
0

「祭演」NO.56(2019年6月) 「祭演」(主催・編集・発行:森須蘭)NO.56(2019年6月)から。

 


戦争は終つたのです青螢   黒田杏子(特別招待席)


背筋に滝を宿している眠り   森須 蘭


まばたきの球形時間しゃぼん玉   杉本青三郎


アスパラガス一人二人と友のゆく   高橋保博

 

 

 

 

 

 

 

【十五句抄出】栗林浩句集『うさぎの話』

$
0
0

栗林浩『句集 うさぎの話』2019年6月
角川書店


 『うさぎの話』は栗林浩(1938 - )の第1句集。序にかえて:高野ムツオ、栞文:今井聖、澤好摩、塩野谷仁。

 著者は「円錐」「遊牧」「街」「小熊座」同人。

 

イギリスのうさぎの話灯を消して


ブータンの野の夢ばかり凍蝶は


   ベルリンにて
蝉の穴東独逸に出てしまふ


冷気立つずらり尾鰭のなき鮪


錆鮎やキリスト像の目が淋し


鯨啼く夜間飛行の瞬きに


中ほどがさびしい花のトンネルは


ホームより長い電車来修司の忌


宇宙から帰還せしごと西瓜抱く


目の玉の沈んでゐたる冬の水


お年寄が見つかりました秋の風


いなびかり二階静かになりにけり


ボスポラス海峡からの隙間風


切れ味の鋭そうなる水着かな


晩秋の水あるところ火を焚きぬ

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

【雑録】このひと月くらいに読んだ本の書影 Part74

$
0
0

 先月よりは復調しているはずと思いきや、冊数をチェックすると驚くほど本が読めていない。

 物件的に懐かしいのは秋元文庫の光瀬龍(装画・依光隆)、角川文庫の高木彬光(装画・日暮修一)、集英社文庫の佐野洋(装画・上西康介)、教養文庫の久生十蘭(装画・司修)、角川文庫の半村良(装画・杉本一文)など。

 『文学は教育を変えられるか』『沖縄詩歌集~琉球・奄美の風~』は版元から寄贈頂きました。記して感謝します。

 

 

 

久生十蘭『無月物語』久生十蘭『無月物語』教養文庫・1977年

収録作品=遣米日記/犬/亜墨利加討/湖畔/無月物語/鈴木主水/玉取物語/うすゆき抄/無惨やな/奥の海

 

 

 

 

 

 

 

 


久生十蘭『地底獣国』久生十蘭『地底獣国』教養文庫・1976年

収録作品=地底獣国/黒い手帳/海豹島/墓地展望亭/カイゼルの白書/犂氏の友情/月光と硫酸/レカミエー夫人

 

 

 

 

 

 

 

 


日咲ユサ『星野宮桜子の三度目の正直。2』日咲ユサ『星野宮桜子の三度目の正直。2』ビーズログ文庫アリス・2016年
《『キミ☆らぶ』の悪役令嬢・星野宮桜子に(二回も!)転生した西野美優。刺殺エンドを回避しようとするも、居るはずのないメインヒーロー・京極紫苑が同じ中学に。しかも何だか友好的――って、こんなルートは聞いてない! そんな中、幼馴染みの流に絡む相手をやり込めた桜子は、次の日から流とぎくしゃくしてしまい……? 悪役令嬢の本領発揮!? 果たして「生き残り計画」は達成できるのか!?》

 

 

 


光瀬龍『その列車を止めろ!』光瀬龍『その列車を止めろ!』秋元文庫・1974年
《東京・昭和中学校二年の安川雅志、中原雄一、山崎光夫の三人をのせた特急こだま一八五号は、突然、なにかの不思議な原因によって、止まるべき新横浜駅を通過してしまった。国鉄の必死の努力にもかかわらず特急こだま一八五号は暴走をつづける。このままだと、脱線、てんぷく……車内の人はそう思ってそうぜんとなった。》

収録作品=その列車を止めろ!/シャットアウト!“B”

 

 

 

 


バラード『溺れた巨人』J・G・バラード『溺れた巨人』 創元推理文庫・1971年
《嵐の去ったあと,浜辺に打ちあげられた巨人の死体。自転機能を停止した地球に訪れる時間の消失。臓器移植技術の発達で、著しくのびた寿命とそれにまつわる人間模様。スクリーン・ゲームに興ずる退廃的な人々の話。超現実的世界を舞台に耽美的な幻想とエキゾチシズムを漂わせる“ヴァーミリオン・サンズ・シリーズ”の作品を含む華麗な全九編を収録。》

収録作品=溺れた巨人/爬虫類園/たそがれのデルタ/あらしの鳥、あらしの夢/スクリーン・ゲーム/永遠の一日/うつろいの時/薄明の真昼のジョコンダ/ありえない人間

 

 


高木彬光『刺青物語』高木彬光『刺青物語』角川文庫・1983年
《白い肌に妖美に舞う刺青は、さまざまな“伝説”をいまに残している。
 町火消「を組」の頭・新門辰五郎の娘およしの場合もそうだ。親から持ち込まれた縁談を断わる口実に、およしはその背一面に観音像を彫りあげた。
 この鉄火気質のおよしが、ある口喧嘩の仲裁をかってでたのだ。そこを一人の侍に見とめられた。その侍こそ、後の十五代将軍慶喜、この奇妙な縁で、およしは慶喜の側妾となった。
 そして後日、官軍との戦さに負け続けた幕軍が、最後の大決戦を決意した時、およしは背の観音像のお告げを、慶喜に進言した――。
 歴史の陰に秘められた、刺青にまつわる意外な真実を、推理界の第一人者が語る歴史推理の傑作。》

 


高木彬光『二幕半の殺人』高木彬光『二幕半の殺人』角川文庫・1976年
《――部屋へ入って死体に近づくと、青酸カリ特有の強いアーモンド臭が鼻をついた。密室同様のホテルの一室で和服の女性が死亡、着衣も乱れずまったく不自然な様子も見当たらない。自殺の可能性が濃厚だった。
 それから四日経って女の身元が判明した。だが、自宅から小量だがヘロインが発見されて、捜査本部はにわかに活気づいた。彼女は、中国人の愛人から、土地購入資金に三千万円を手渡されていた直後でもあったらしい。土地詐欺の発覚を恐れての殺害?
 捜査の第一線で聞込みに活躍する検事霧島三郎は、死亡した女の背後に複雑な人間関係の糸のもつれを感じとっていた。傑作ミステリー、表題作ほか4篇収録。》

収録作品=被害者を探せ/毒の線/同名異人/鬼と鯉/二幕半の殺人

 


ノヴァーリス『青い花』ノヴァーリス『青い花』岩波文庫・1989年
《ある夜,青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花。その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から、彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る。それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあった。無限なるものへの憧憬を“青い花”に託して描いたドイツ・ロマン派の詩人ノヴァーリス(1772-1801)の小説。》

 

 

 

 

 

 

池内紀編訳『ウィーン世紀末文学選』池内紀編訳『ウィーン世紀末文学選』岩波文庫・1989年
《学問・芸術が絢爛たる花々を咲かせた「精神の世界都市」ウィーン。文学界にはシュニッツラーやホフマンスタールなど、いずれも一筋縄では行かぬ文人たちが輩出し才を競いあった。その多彩な世界を一望し、特異な精神風土を浮び上がらせる待望のアンソロジー。》

収録作品=レデゴンダの日記(シュニッツラー)/ジャネット(バール)/小品六つ(アルテンベルク)/バッソンピエール公綺譚(ホフマンスタール)/地獄のジュール・ヴェルヌ/天国のジュール・ヴェルヌ(ヘヴェジー)/シャイブスの町の第二木曜日(ヘルツマノフスキー=オルランド)/ダンディ、ならびにその同義語に関するアンドレアス・フォン・バルテッサーの意見(シャオカル)/オーストリア気質(フリーデル)/文学動物大百科(抄)(ブライ)/余はいかにして司会者となりしか(クー)/楽天家と不平家の対話(クラウス)/すみれの君(ポルガー)/落第生(ツヴァイク)/ある夢の記憶(ベーア=ホフマン)/ファルメライヤー駅長(ロート)/カカーニエン(ムージル)

 


リー『幻獣の書―パラディスの秘録』タニス・リー『幻獣の書―パラディスの秘録』角川ホラー文庫・1994年
《舞台はヨーロッパのとある幻想の都パラディス。地方から学問を修めるために上京した青年ラウーランは、凋落貴族デュスカレの屋敷に下宿する。まもなく彼はこの不気味な屋敷で美貌の幽霊に出遭う。彼女の名はエリーズ・デュスカレ。誰もがその名を忌み嫌う。やがてラウーランを巻き込む奇怪な出来事の数々、その謎は遠くローマ時代にまで遡り、一族の呪われた運命が解き明かされてゆく…。幻夢的な作風で知られる著者が描く、美しくも禍々しい怪奇物語。》

 

 

 


バラード『ハロー・アメリカ』J・G・バラード『ハロー・アメリカ』創元SF文庫・2018年
《21世紀初頭、アメリカ合衆国は崩壊し砂漠と化した。1世紀が過ぎたある日、蒸気船でイギリスを出港した小規模な探険隊が、ニューヨークに上陸する。密航者の青年は、自分がこの国の新しい支配者、第45代大統領となることを夢見るが……。残存者のいる諸都市を探訪し、アメリカの夢と悪夢の残滓と邂逅した探険隊の記録を通じて、予言者バラードが辛辣に描き出す、強烈な未来像!》

 

 

 

 

 


宇井伯寿・高崎直道訳註『大乗起信論』宇井伯寿・高崎直道訳註『大乗起信論』岩波文庫・1994年
《従来の仏教を、出家者中心、自利中心と批判、在家者を重視し、利他中心の立場をとろうとする、紀元前後のインドで起った仏教革新運動を大乗仏教という。この大乗仏教の根本教義を理論と実践の両面から手際よく要約した本書(5、6世紀頃成立)は、中国・日本の仏教者に愛読され、大きな影響を与えてきた。改版にあたり新たに現代語訳を付す。》

 

 

 

 

 


アンダースン『時の歩廊』ポール・アンダースン『時の歩廊』ハヤカワ文庫・1979年
《不当な殺人容疑で逮捕されていたマルカム・ロックりっじは、若くて美しい、見知らぬ女の尽力により無事釈放された。彼女は一流の弁護士を雇い、莫大な費用をかけて勝訴にこぎつけたのである。ストーム・ダロウェイと名乗るその女から、ユトランド半島の地下道に埋められた秘宝の探索を依頼されたマルカムは、ただちにコペンハーゲンに飛んだ。しかし、森林の奥深くにある地下道からふたたび地上にもどると、なんとそこは2000年前のユトランド半島だった! 時の支配をめぐって熾烈な戦いをつづける二大勢力――その時間戦争にまきこまれた一青年の運命は……?》

 

 

 


福田淑子『文学は教育を変えられるか』福田淑子『文学は教育を変えられるか』コールサック社・2019年
《福田氏の評論の特徴は、長年にわたり高校教師や大学講師を続けてきたからか、論考を読んでいるといつのまにか「文学教育論」という磁場に引き込まれていくような思いに駆られる。Ⅲ章は「文学教育論・エッセイ」だが、Ⅰ章の初めから、文芸評論でありながらも、文学には人間の精神の最も重要なことを感じさせ考えさせる力があるという確信が福田氏の中に存在しているように見受けられる。(鈴木比佐雄「解説」より)》

 

 

 

 


大江健三郎『ヒロシマ・ノート』大江健三郎『ヒロシマ・ノート』岩波新書・1965年
《広島の悲劇は過去のものではない。一九六三年夏、現地を訪れた著者の見たものは、十数年後のある日突如として死の宣告をうける被爆者たちの“悲惨と威厳”に満ちた姿であり医師たちの献身であった。著者と広島とのかかわりは深まり、その報告は人々の胸を打つ。平和の思想の人間的基盤を明らかにし、現代という時代に対決する告発の書。》

 

 

 

 

 

 

 


柴田錬三郎『デカダン作家行状記』柴田錬三郎『デカダン作家行状記』中公文庫・1989年
《ニヒルな剣士“眠狂四郎”を生んだ著者が、その若き日、汚濁の時代への慣怒をこめて世相を強烈に諷刺した初期作品――虚無と頽廃に身を染めた男の反日常的な姿をうつす「デカダン作家行状記」と世情への直言にみちた「やくざな神の物語」の二作を収める。》

 

 

 

 

 

 

 


開高健『輝ける闇』開高健『輝ける闇』新潮文庫・1982年
《銃声が止んだ……虫が鳴く、猿が叫ぶ、黄昏のヴェトナムの森。その叫喚のなかで人はひっそり死んでゆく。誰も殺せず、誰も救えず、誰のためでもない、空と土の間を漂うしかない焦燥のリズムが亜熱帯アジアの匂いと響きと色のなかに漂う。孤独・不安・徒労・死――ヴェトナムの戦いを肌で感じた著者が、生の異相を果敢に凝視し、戦争の絶望とみにくさをえぐり出した書下ろし長編。》

 

 

 

 

 


サガン『厚化粧の女(上)』サガン『厚化粧の女(上)』集英社文庫・1985年
《若者食いで加られる大プリマドンナや高名で野卑なドイツ人指揮者、砂糖王夫妻にブルジョワ左翼の夫婦、ペテン師や若いジゴロ、粗野な船長やホモのパーサーたち。裕福で洗練された誇り高い人々たちが、競いあい、憎みあい、愛しあう。さまぎまな人間ドラマを乗せて豪華遊覧船ナルシス号が地中海を航行する……。》

 

 

 

 

 

 


サガン『厚化粧の女(下)』サガン『厚化粧の女(下)』集英社文庫・1985年
《若いジゴロのアンドレアスに食指をうごかす大プリマドンナのラ・ドリアッチ。ペテン師ジュリアンの言葉に心を奪われ恋に陥ってしまうブルジョワ左翼の妻クラリス。着かざり塗りたくった人々の外見とは裏腹に、ある孤独感が日ごとに色濃く船内をおおってゆく……。  解説・吉田暁子》

 

 

 

 

 

 


鈴木比佐雄・佐相憲一・座間寛彦・鈴木光影編『沖縄詩歌集~琉球・奄美の風~』鈴木比佐雄・佐相憲一・座間寛彦・鈴木光影編『沖縄詩歌集~琉球・奄美の風~』コールサック社・2018年
《詩歌に宿る沖縄の魂(まぶい)!沖縄を愛する204名による短歌、俳句、詩などを収録! ~「おもろそうし」を生んだ琉球国の民衆や、琉球弧の島々の苦難に満ちた暮らしや誇り高い文化が想起され、今も神話が息づく沖縄の魂(まぶい)を感受し多彩な手法で表現されている。~(鈴木比佐雄「解説文」より)》

 

 

 

 

 


佐野洋『未亡記事』佐野洋『未亡記事』集英社文庫・1977年
《「四六新聞」の亀沢部長が急死という電話で浅田は記事を書き、お通夜に出かけると、亀沢の妻はそんな電話をした覚えがない、と云う。しかし、亀沢のネームのある洋服を着た男の礫死体が顔も指紋も滅茶苦茶の姿で発見された。犯人は、内部の者か、本当に亀沢は死んだのか? 地方新聞社を舞台に、二転三転する推理の迷宮へ誘う。    解説・権田萬治》

 

 

 

 

 


高木彬光『追跡』高木彬光『追跡』角川文庫・1976年
《〈現職の警部が雪の降る路上で射殺された〉実際の事件をヒントに、裁判の正義を信じる著者の憤りが産んだ本格推理小説の傑作。――弁護士百谷泉一郎のその友人は、変死体で発見された。懲役20年の冤罪事件について相談にきた直後だった。拳銃に異常な興味を示し、宿泊ホテルの遺留品の中にも、発射されてつぶれた弾丸が数個発見された。だが、恋人だと称していた女の写真だけが消えていた。不鮮明な女の身元、殺人事件の謎を追って、泉一郎は札幌へ飛んだ。
 忌むべき殺人の濡衣、冤罪事件に巻きこまれないと、あなたは断言できるだろうか?》

 

 

 


中井英夫『銃器店へ』中井英夫『銃器店へ』角川文庫・1975年
《暗い墓窖めいた乗口、そして地下鉄の終点にある銃器店は何を暗示するのか。卓抜な手法で、未来のメカニズムから〈現代〉を見返す表題の幻想小説。時代の悪夢ともいうべき戦争の下で、愛の狂気が宿命的な死へ収斂してゆく様を、醇乎たる文体で描く名品「黒塚」。
 〈死と変身と、それをつらぬく時間〉への関心をひたすら抱く、“異次元からの流刑者”の末期の眼に映じた虚無の世界――。血と死と禁忌、夜と廃墟と夢幻に彩られた五つの中短編集。》

収録作品=黒塚/炎色反応/空き瓶ブルース/かつてアルカディアに/銃器店へ

 

 


半村良『都市の仮面』半村良『都市の仮面』角川文庫・1979年
《事務機を扱う中小企業のセールスマン駒井は、味けない毎日から抜け出たいと強く願っていた。
 そんな時、思わぬ幸運が舞い込んだ。一流商社から、ただ優雅に暮らし、遊ぶことだけを条件に、引き抜かれたのだ
 都心に豪華マンションを与えられた彼は、とびきりの美人から奇妙な研修をほどこされた後、流行のファッションに身を包み、毎夜、一流のクラブに出入りするようになった。だが、享楽の果てに彼を待っていたものは……。
 表題作ほか、何げない日常生活にひそむ恐怖を描く力作五篇を収録。》

収録作品=都市の仮面/静かなる市民/村人/生命取立人/旧約以前/おまへたちの終末

 

 


半村良『戦国自衛隊』半村良『戦国自衛隊』角川文庫・1978年
《近代兵器を装備した自衛隊が裏日本一帯で大演習を展開していたが、新潟と富山の県境に集結した一隊を、突如、“時震”が襲った。突風が渦を巻きあげた瞬間、激しく揺れる大地に、彼等の姿は跡かたもなくすいこまれていった……。
 伊庭三尉を中心とするその一団は、いつの間にか群雄が割拠する戦国時代にタイムスリップしていた。そこで後に上杉謙信となる武将とめぐり逢った。
 “時の神”は、哨戒艇、装甲車、ヘリコプターなどの最新兵器を携えた彼等を、槍と刀の時代に送り込み、歴史を大転換させるつもりなのだろうか。
 現代兵器を駆使する自衛隊が乱世に殴り込みをかける痛快無比な異色SF。》

 

 


ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』D・H・ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』角川文庫・1958年
《主人公コニイは戦争で不能者となった夫との空虚な生活にあきたらず、たくましい密猟監視人の素朴な肉体愛のうちに人生の真の幸福を発見する。作者が生涯貫き通した生命主義の思想を究極までおし進めた結果がこの作であり、正しい肉体の意味を知った男女両性間の「やさしさの哲学」を説き文明に毒された人間の結び付きを非難する。》

 

 

 

 

 


ブラッドベリ『恐竜物語』ブラッドベリ『恐竜物語』新潮文庫・1984年
《恐竜になることを夢見る少年を細やかな筆致で描く書き下ろし「恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?」、仲間を求め年に一度はるかな海の底から灯台めざして泳いでくる地上最後の恐竜の物語「霧笛」など、抒情と幻想の詩人ブラッドベリの珠玉の名品6編を集める愛蔵版恐竜SFコレクション。メビウス、ステランコをはじめ一流アーティスト6人による豪華なイラスト多数収録。》

収録作品=恐竜のほかに、大きくなったら何になりたい?/いかずちの音/見よ、気のいい、気まぐれ恐竜たちを/霧笛/もしもわたしが、恐竜は死んではいない、と言ったとしたら/ティラノサウルス・レックス

 

 

おまけ


佐野洋『未亡記事』、高木彬光『追跡』のフェア帯付き画像

 

佐野洋『未亡記事』(帯付き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高木彬光『追跡』(帯付き)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【十五句抄出】小島一慶句集『入口のやうに出口のやうに』

$
0
0

小島一慶『句集 入口のやうに出口のやうに』2019年7月
ふらんす堂


 『入口のやうに出口のやうに』は小島一慶(1944 - )の第1句集。序文:星野高士、阿川佐和子。

 著者は元TBSアナウンサー(90年以降フリー)。

 


福寿草空のはじまる低さかな


入口のやうに出口のやうに夏至


ことりとも山は動かず返り花


更衣まだ海の色ととのはず


十薬や雨にくぐもるひとのこゑ


梅雨ふかし賽銭箱の錠前も


秋風のまよひたき露地ありにけり


神の旅地にあるものは朽ちやすく


この世だけつながる電話いわし雲


応仁の乱のことなど冬紅葉


ひとはみな誰かを待たせ冬の草


今も言へる恩師の住所花は葉に


薄切りの厚焼き卵避暑の宿


肉じやがのにほふ楽屋や盆芝居


盆芝居果てて果てなき波の音

 

 

 


※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。

 

 

 

 

 

Viewing all 1793 articles
Browse latest View live