【十五句抄出】仙田洋子句集『はばたき』
【十五句抄出】山内将史句集『鈴の中』
【雑録】このひと月くらいに読んだ本の書影 Part76
8月は松山に行ったり熊本に行ったり遠出が多かったこともあって、いつにも増して面倒なものを読んでいない。くたびれているときに飛行機などに持ち込むにはヒロイック・ファンタジーの類が向いているとわかった。
90年代のベストセラー、荒巻義雄『紺碧の艦隊』が全巻手に入ってしまったので今頃読み始めた。個人的にはそれまで愛読していた荒巻義雄の新作をいちいち追わなくなったきっかけとなった作品。
安井高志『詩集 ガヴリエルの百合』は版元から寄贈いただきました。記して感謝します。
谷譲次『踊る地平線』教養文庫・1975年
《がたん! ――という一っの運命的な衝動を私たちにつたえて、東京発下関行急行は、欧亜連絡の国際列車だけに気取った荘重さのうちに車輪の回転を開始した。下関、釜山、ハルビン……万国寝台車の窓に踊る、踊る、地平線!》
収録作品=踊る地平線/テムズに聴く/ノウトルダムの妖怪/血と砂の接吻/しっぷ・あほうい!/長靴の春/白い謝肉祭
安井高志『詩集 ガヴリエルの百合』コールサック社・2019年
《安井高志という詩人は、自己の経験した自然や事物や他者存在などの魅力を豊かな神話的イメージに変換しうる、ある意味で天性の存在論的抒情詩人であったと感じた。『ガヴリエルの百合』に収録された二二五の詩篇は、どの詩もシャープな言葉で内面の奥深いところからあっさりと掬い上げられたように響きわたり、それらは魂の在りかとして五章に分類されている。(鈴木比佐雄「解説」より)》
森村誠一『蟲の楼閣』角川文庫・1978年
《政府民友党の大物、小田切篤成。要職に在任中、たっぷり甘い汁を吸った悪徳政治家である。しかし、その強大な権力の牙城にいま、一匹の虫が寄生し、侵蝕を開始した!
就職難に喘ぐ線引小次郎は、ようやく菱井産業開発という会社に入社した。東北専門に土地を買い占める奇妙な不動産会社で、陰の経営者は小田切と密接な関係の女傑和村園枝らしい。業務内容に不審を感じた線引は、卑劣で強引な買収の仕事に反感を抱く同期入社の立川と共に、潜かに内情を探り始めた。だが……。
国家に巣喰う巨大な害虫を痛烈に告発した政治推理小説の傑作!》
長野まゆみ『賢治先生』河出文庫・2003年
《少年たちを乗せた汽車は、ひたすら闇のなかを疾ります……ケンタウリ祭の晩に汽車に乗ったジョヴァンナとカンパネッラ。旅の途中で二人と乗り合わせた宮沢賢治。少年たちとの蒼白い銀河交流の行方は?》
眉村卓『異郷変化』角川文庫・1976年
《旅先での思いがけない出会い。それは人の心に深く刻み込まれ、いつしか美しい思い出として形づくられる……。
が、このいくつかの物語の出会いはみな、普通の出会いとは異なっていた。なぜか女たちは不思議な魅力をたたえ、彼女らに会った男たちはその瞬間から妖気あふれる幻想世界へと引きずり込まれてしまう。あなたにもいつか、こんな出会いに恵まれる日が来る……。
眉村卓が、叙情豊かに描く、妖奇幻想の物語集!》
収録作品=須磨の女/奥飛驒の女/風花の湖西線/空から来た女/中之島の女/銀河号の女/砂丘の女
加納邑『ド麗な執事様』もえぎ文庫ピュアリー・2010年
《日本屈指の大富豪・高屋敷家の二男の透に、イギリス人の血を引く美麗執事・アーサーが専属執事としてつけられる。ワガママいっぱいに育ってきた透は、執事に四六時中付き添われては自由を奪われかねないと、アーサー追い出し計画を実行! Hに迫れば出ていくだろうと思い、アーサーにキスを仕掛けるが、逆に彼の本能に火をつけてしまって…!? ピュア系ワンコ執事×小悪魔系ツンデレ坊ちゃんの超スイート❤デイズ。》
大江健三郎『キルプの軍団』岩波書店・1988年
《高校生の「僕」は、刑事の忠叔父さんとディケンズの小説『骨董屋』を読み進めていくうちに、とてつもない「事件」に巻きこまれてしまう。――人間の悪と罪、そして「ゆるし」、「癒し」とは何かを追究した大江文学の結晶。》
赤江瀑『アンダルシア幻花祭』講談社・1980年
《哀切華麗な妖美の世界
スペイン南部・アンダルシアの地で知った青春の痛みと悲しみ――ひまわりの花が咲き揺れる明るい陽光の下、異国の妖しい魔性に魅入られた若い日本人男女がたどる悪夢のような悲恋劇を描く。》
収録作品=アンダルシア幻花祭/刀花の鏡/五月の鎧/音楽室の岬/獣心譜
高橋たか子『過ぎ行く人たち』女子パウロ会・2009年
《人の心の奥底にある、個人的経験を超えた普遍的な無意識の世界を旅する、とでもいう、夢幻的・象徴主義の純文学。》
栗城偲『きみはぼくのつがい』ガッシュ文庫・2018年
《オメガであるがゆえに両親から敬遠され、高校生で一人暮らしの遙。そんな遙の目下の悩みは、ストーカー被害に遭っていること。それを5才下の弟・都に知られると、遥に懐いている都はボディーガードをすると言ってきた。助っ人として連れてきたのは、地元名士の子息でアルファの少年・嗣英。出会い頭に「俺と付き合わない?」と迫られびっくりするが、小学生なのに大人びていて甘い匂いがする嗣英に遥はどきどきさせられて…!?》
カーレン・ムラディアン『アーシル・ゴーキー―ある異邦人との対話』PARCO出版・1982年
《魂の画家ゴーキーの死・夢・創造
1930~40年代、異邦の魂をもってアメリカ現代美術の開花期を先駆した神話的画家ゴーキー(1904~1948)。自殺によって終止符をうった美の漂泊者の足跡を辿る。ゴーキーを語ることがいま現代美術を語ることである。
本邦初公開作品群60余点一挙収録》
大江健三郎『文学ノート―付・15篇』新潮社・1974年
《それは具体的に『洪水はわが魂に及び』を書きすすめる作業の、いちいちの時点において、実際にその小説を書いている自分自身を分析した臨床報告である》(「このノートのためのノート」より)
小松左京『さらば幽霊―自選短編集』講談社文庫・1974年
《妙なやつだと思っているんでしょう?」見知らぬ青年が不意に話しかけてくる「さとるの化物」。冥土と現世の旅行自由化にともないワッと押しよせた幽霊観光団が大混乱をひきおこす表題作。ほかに「比丘尼の死」「保護鳥」など、恐怖と幻想にみちた非現実の世界に読者をいざなう著者自選の怪奇小説11編。》
収録作品=さとるの化物/霧が晴れた時/花のこころ/安置所の碁打ち/ムカシむかし……/比丘尼の死/忘れられた土地/保護鳥/さらば幽霊/海の視線/骨
吉行淳之介『童謡1』集英社文庫・1982年
《ひとつの童謡に触発され、一行、一句が核となり、ふくらみ、分裂し、さらに増殖して、みごとな作品になった。各編巻頭に想を得た童謡を掲げて、類ない試みをした傑作群のうち「童謡」「白い半靴」「錆びた海」「寝台の舟」「海洽いの土地で」を収録。無心に描き上げた“ねむの木学園”の子どもたちの絵と融けあい鮮烈な童心を伝えるカラー版絵本。 解説・開高健》
収録作品=童謡/白い半靴/錆びた海/寝台の舟/海沿いの土地で
吉行淳之介『童謡2』集英社文庫・1982年
《「鳥獣虫魚」「雙生」「香水瓶」「不意の出来事」……一冊の小さな童謡集の中の一篇、あるいはその中の一句に魅かれて書かれた世評高い傑作群にねむの木学園の子供たちの絵が出合い、純粋で無垢な童心を鮮烈につくりだしたカラー版。第2集。 解説・千葉宣一》
収録作品=鳥獣虫魚/雙生/香水瓶/不意の出来事
田中文雄『魔海戦記』カドカワノベルズ・1984年
《十二人の子供を惨殺し、サムソンの子ノバをさらっていった大魔王エグザイル。海の神ダゴンを封じ込め、冥府を支配するエグザイルの狙いは何か。ノバの奪還と、子供たちの復讐のため、サムソンは魔界城へ向け旅立った。だが、その行く手には、さまざまな魔性の剣士や、禍々しき罠が待ち受けていた。サムソンの刃は、邪悪を葬り、この世に正義をとりもどせるか。幻想と怪奇の世界に繰り広げられる冒険スペクタクル長篇。》
田中芳樹『夢幻都市』トクマノベルズ・1988年
《北海道にある日本最大の夢の山岳リゾート都市ウラル。SF作家の相馬邦生は講演の代役をたのまれ、娘の葉月をつれてこの地を訪れた。原始林のなかにそびえる六つの摩天楼、贅を尽した施設を完成させたのは、東堂コンツェルンの第三代総帥の東堂康行、総支配人は甥の伸彦である。彼らに招かれた客は、学者、評論家の有名人で、この巨大な人工都市に胆をつぶした。その夜、葉月は長い廊下で黒褐色の毛と黄玉色の瞳をもつ獣の群れを目撃した。「狼!?」。圧倒的人気の田中芳樹が鮮烈に描くホーンティッド・ストーリの最新作!》
吉行淳之介『対談 浮世草子』集英社文庫・1980年
《男と女の複雑にして微妙、厄介この上ない関係を粋なめがねで透視して、一見ワイ談風の語り口のなかに、厳粛な人生を語りつくす。対談の名手・吉行淳之介が本領をいかんなく発揮した、天の下に語りつぐべき名問答。“いろは”48人登場の傑作対談集。 解説・青柳茂男》
森下一仁『宇宙人紛失事件』徳間文庫・1984年
《異星から帰還途中、宇宙人と遭遇した宇宙船の乗組員から新聞記者が聞いたとても怖い話――。金儲け話をみつけては、成功手前でいつも頓挫、それでも億万長者を夢見る男のおかしな話――。野良パンダや人間たちにいつも冷たくされている清掃ロボットたちの哀感あふれる話――。
いつの時代でも変らない人間の残酷さと哀しさを意表をつく着想でさりげなく描いたSF傑作集。単行本未収録全十三篇。》
収録作品=愛ゆえに/使命/公園《星》/清掃者たち/進行性躁乱病/子供たちの王国/カオスの兄弟/囚われの宇宙船/愛を告げる時/宇宙人紛失事件/インタビュー/木の町/愛という名の戦略
田中芳樹『マヴァール年代記1』カドカワノベルズ・1988年
《大陸暦1091年2月、「北の雄」マヴァール帝国は隣国と武力抗争の渦中にあった。陣中に、皇帝崩御の報がもたらされた時、総司令官カルマーンは、すでに勝利を手中に収めていたが、追撃を放棄し、帝都オノグール城の父の元へ急行した。帝位を継承するのは誰か?玉座をめぐる混迷が、カルマーン、ヴェンツェル、リドワーンという、かつての学友の再会に“野心”という一匹の竜を介在させた。どんなに豪華な玉座であっても、二つの野心が共存できる広さはないのだ――。
いよいよ開幕、幻想歴史ロマン、マヴァール年代記三部作。》
田中芳樹『マヴァール年代記2』カドカワノベルズ・1988年
《大陸暦1092年3月、カルマーン大公は皇帝カルマーン二世となり、マヴァール帝国第二十五代皇帝となった。6月、マヴァール軍二十五万は皇帝カルマーン二世の親率のもとに、積年の仇敵エルデイ王国と対ツルナゴーラ統一戦線を結成。カルマーンのツルナゴーラ征服は、その鮮やかさによって近隣諸国を戦慄させた。ツルナゴーラ王国が滅亡、大併合によりマヴァールの領土、二百州。史上空前の版図である。
この年、皇帝カルマーン、金鴉国公ヴェンツェル、黒羊公国世子リドワーン、ともに二十七歳。三者が馬首を並べて同一の敵と戦ったのはツルナゴーラ継承戦役が最後の例となった―。》
田中芳樹『マヴァール年代記3』カドカワノベルズ・1989年
《大陸暦1093年3月1日。マヴァール皇帝カルマーン二世は、アデルハイド姫との婚礼の席上、クールラント軍侵攻の報をうけ、急遽、大軍を親率、戦場へ直行した。ウルガール軍との連係作戦を看破し、両軍の不法侵入を撃退、一日にして二国軍を潰滅させた。そして、今また、クールラントに遠征。史上空前の版図に加え、新たな勝利を手中に収めようとしていた。が、ウルガール軍逆襲の報で本国に帰還途中、エルデイ軍の奇襲を受け、大敗をこうむった。これら時機を得た敵襲は一本の謀略の糸で操られていた……。5月19日。リュテッセンの野における、マヴァール帝国の支配権をかけた死戦はたった二人の正面決戦となった――。》
栗城偲『悲しみません、明日までは』プラチナ文庫・2015年
《夏休み直前、要の住む小さな町にやって来た優吾。無愛想な彼が胸中に抱える行き場のない悲しみや憤りに、誰にも言えない初恋を抱く要は共感を覚える。優吾の傍は居心地が良かった。けれど彼は、要が長いこと片想いする隣家の「兄ちゃん」の再婚相手の連れ子だった。要の想いを知った優吾に詰られ、嬲るように押し倒される。抵抗する要だったが、やがて自暴自棄になり……。》
田村隆一『インド酔夢行』集英社文庫・1981年
《ナップザックの中には紙パンツと鎌倉八幡宮のお守り。ウィスキーを片手に縦横にインドを旅する詩人が出全うものは、太陽、土、花、水、聖者、そしてコモリン岬の世界で一番美しい夕陽、ヒンドウーの神々……など。永遠と現在の交錯するカオス、B.C.とA.D.が同時に存在する神秘の国インドをめぐる軽妙で深遠な紀行。 解説・吉増剛造》
E・ブロッホ『未知への痕跡』イザラ書房・1969年
《文学の始原を探る
人間存在の根底的考察において、カフカの暗闇に白昼のモティーフを対峙せしめたエルンスト・ブロッホの初期評論・自伝的エッセイ》
栗城偲『君の隣で見えるもの』ディアプラス文庫・2012年
《とある事情で高校を停学になった郁斗は、一足早く迎えた夏休みをひとり母の実家へ送り込まれることになった。電車は少なくコンビニは遠く、訛りのきつい言葉が飛び交う東北の田舎町は、郁斗にとって心細くよるべなき場所。そこで郁斗をあたたかく迎えてくれたのは、一つ年下の広大だった。長身の頼れる男に成長していた従弟に、郁斗はだんだん惹かれていくが……? 優しく切ない、青春エモーショナル・ロマンス♡》
ミシェル・ビュトール『仔猿のような芸術家の肖像』筑摩書房・1969年
《■作者のことば■ 作者はまだ学生のころ友人のハンガリー人を介して、厖大な蔵書で有名な南ドイツのある城に招かれそこで数週を過ごすことになる、主人の公爵の身内で、この地方に避難してきた蔵書管理人の伯爵が、そのすばらしいフランス語の知識をいっそう磨きのかかったものにしたいと望んでいたのだ。
そして時間の中への旅、18世紀は神聖ローマ帝国のたそがれともいうべき、この地方のいくつかの小島でようやくその終焉をむかえようとしている。
夢の巣箱、昼間の自叙伝風の物語にやがて、東方につきまとわれた夜々の構築が絡み合わされる。
読者はこの書物の題に、ジェイムズ・ジョイスとディラン・トマスへのオマージュを通して、錬金術師という〈自然の猿〉のようなかつてのあのすぐれた芸術家の中世的表現を認めるであろうし、また読みすすむにしたがってかれの前には、この表題の他のさまざまな相がくりひろげられるであろう。》
栗城偲『恋愛モジュール』ディアプラス文庫・2011年
《人付き合いが苦手なプログラミング・オタクの島垣は、ソフトウェア会社に勤めている。一日中パソコンに向かっていられたら幸せなのに、新規プロジェクトのリーダーになってしまった。新しく職場にやってきたSEの藤森は、王子様のような年下のイケメン。明るく人懐こいその男と上手くやっていく自信が島垣にはなかった。だが、一人デスマーチの末に島垣が倒れたことから、二人は急接近し……? IT業界ラブ♡》
荒巻義雄『紺碧の艦隊―運命の開戦』トクマ・ノベルズ・1990年
《ロシアとの日本海海戦で瀕死の重傷を負った高野五十六は、一命を取りとめたものの、実は別の世に生まれ変わっていた。二度と同じ誤ちを繰り返さないために、秘かに精鋭集団“紺碧会”を結成し、クーデターを画策する。照和十六年、首相官邸を襲って新政府を樹立した“紺碧会”は、アメリカ政府に巧妙な罠を仕掛けた。名将高野の采配はいかに? はたして日本に勝算はあるのか? アメリカを震撼させた“紺碧艦隊”のすさまじい破壊力に乞うご期待! 前世経験と最新技術を駆使した“紺碧”シリーズ第一弾!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊2―帝都初空襲』トクマ・ノベルズ・1991年
《パナマ運河を攻撃し、アメリカの軍事物資輸送船の遮断に成功した“紺碧会”の次なる目標は、パプア・ニューギニア攻略戦である。極秘のうちに東京へ戻った前原一征少将は、高野五十六軍令部総長、大高弥三郎首相と密会し、陸軍をパプア・ニューギニアに向けることを決定した。また捕獲済の米戦艦を改装した“紅玉艦隊”を紅海封鎖に配置する。そして前世のミッドウェー敗戦の遠因となった帝都大空襲に備えて開発したのが、新型局地戦用迎撃機蒼莱である。アメリカを迎え撃つ秘密戦闘機の恐るべき威力に注目せよ!!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊3―濠州封鎖作戦』トクマ・ノベルズ・1991年
《高野総長より特命を受けた前原一征少将は、秘かにミクロネシアのヤルート島に潜入した。ここには旧友の九鬼鷹常中将率いる海軍特殊師団が駐留していた。ただちに特潜隊を借りて、新たに九〇〇型潜輸で編成された特別輸送船団とともにサモアへ向かった。数日後夜間の奇襲によりサモアはあっけなく陥落し、この報らせを受けた敵将マッカーサーは、驚愕した。「このままでは濠州にも危機が迫る!」。はたして日本はマッカーサーに巧妙な罠を仕掛けた……。そして同時に進行する超丸秘の“富士”計画とはいったい……?》
荒巻義雄『紺碧の艦隊4―原爆阻止作戦』トクマ・ノベルズ・1991年
《高杉艦隊は、ハワイ~ライン~サモア戦略ライン完成のために、敵地クリスマス島へ接近していた。途中、敵機ムスタングの来襲を一蹴した矢先、特殊仕様B32のデビル・チームに遭遇した。戦艦比叡の活躍で何とか難を逃れたものの、同じ頃、パールハーバーの日本海軍太平洋艦隊根拠地爆撃に成功したB32大編隊が給目のためにクリスマス島に向かっていることがわかり……。ついにアメリカは原爆使用を決定し、本領を発揮しはじめた――それでも日本に勝算はあるのか? 人気沸騰の究極の海戦シミュレーション第4弾!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊5―空中戦艦富士出撃』トクマ・ノベルズ・1992年
《照和十九年、大高首相は画期的新戦略を断行した。南樺太をユダヤ人に提供し、“東方エルサレム共和国”を建国させ、アメリカ国内をはじめ世界中のユダヤ勢力を味方につけたのである。しかも対ドイツ戦の劣勢のソ連に、食糧と医薬品の無償援助をするかわりに、ユダヤ系ソ連人の国外脱出を認めさせた。急激な日本の動きに、“影の政府”は驚愕した。ヒトラーを台頭させてヨーロッパに戦争を起こすことを目論んでいたからである。それどころか日本はドイツに宣戦布告した。ついに恐るべき天極作戦が明らかに……。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊6―風雲マダガスカル』トクマ・ノベルズ・1992年
《照和二十年八月十五日、後世世界は前世敗戦日より新たな局面に突入した。巨大化した独逸第三帝国は石油資源の豊富な中東支配を目論んでいた。中東が陥ちれば、必ず印度が狙われ、日英同盟は崩壊――アジアが脅威にさらされる。印度洋西端に位置し、中東、印度、アフリカ東部を威圧できるマダガスカル島獲得こそが、独逸攻略の第一歩である。大胆な戦略で壮大なテーマに挑む急展開の第二部スタート。ヒトラーの恐るべき野望を阻止せよ!! 大改装を終えて増強された紺碧艦隊の驚異的破壊力がいま明らかに……。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊7―紅海雷撃作戦』トクマ・ノベルズ・1992年
《世界戦略上の重要拠点マダガスカル島は、独逸軍のねばり強い抵抗にあい、依然、陥ちなかった。しかもヒトラーは、その隙にペルシャ湾への進出、さらに印度亜大陸への侵攻を狙っていた。着々と進むヒトラーの全世界征服計画から亜細亜を守るため、大高首相は南樺太開放に続く第二の英断を下した。全亜細亜団結にむけて、敵対する人民中国と中華中国両政権の和平交渉に乗り出したのだ。一方、ヒトラーの魔の手は目前に迫っていた。突如独空軍の誇る超重爆撃機ヨルムンガンドが日本本土に侵入し……。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊8―海中要塞鳴門出撃』トクマ・ノベルズ・1993年
《照和二十一年三月三日――後世は雛祭り。大高首相は高野五十六とともに、無事帰還した前原一征と再会し、ついにパナマ第二運河を完成して再び危険な存在となったアメリカへの対処の仕方を検討していた。そこへ突然、マダガスカル島が陥落したとの朗報が入った。――時局の変化に大高首相の決断は早かった。米大陸西部沿岸に進出する龍宮作戦を発令し、前原を千島列島の宇志知島秘密基地へ派遣した……。日本の誇る驚異の海中移動要塞鳴門とはいったい何か? ますますパワーアップした超人気の〈紺碧〉シリーズ第8弾!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊9―新憲法発布』トクマ・ノベルズ・1993年
《照和二十一年八月末、箱根強羅の静養先から帝都に戻った大高首相は、大胆な政治改革に乗り出した。政党政治の監視役を目的とする賢議院の権限を強め、不正議員に対する告発権、審査権を与えたのだ。同時に、マスコミ各社に議員や公務員の不正の追及を要請し、政治腐敗の阻止に努めた。さらに“開かれた政治”を目指すため、国会議事堂を大改装し、審議中は誰でも見学できるように、何百もの観覧席を設けた。国民の興味を政治に向けさせることに成功した矢先、英国のキィストン・チャーチル元首相の来日が決定し……。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊10―暗雲印度戦線』トクマ・ノベルズ・1993年
《照和二十二年七月、大高首相は、首相官邸で高野軍令部総長、木戸外相と今後の展望について検討した。先に豪州ケアンズで行なわれた秘密会談――アイゼンハワー元帥、マッカーサー元将軍、リーガン元提督の米側三首脳によるクーデター計画を確認。一方、印度洋の情勢は、ますます切迫しており、危機に瀕する紅玉艦隊を支援するため、至急、紺碧艦隊の印度洋への派遣を決定した。ただちに大高首相は印度政府の諒解を取ると、アラビア海のラカディブ諸島の無人島に第二紺碧島建設計画を推進し……。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊11―電撃ロンメル軍団』トクマ・ノベルズ・1993年
《照和二十二年八月初頭、前原一征は、デカン要塞の視察を終え、ナグプールからコーチンに向かった。入院中の紅玉艦隊司令長官川崎中将を訪ねた矢先、ついに独逸軍が英国本土上陸作戦を開始した、との報らせが入り、戦局は一気に急展開。一方、不敗の名将ロンメメル率いる装甲機械化軍団も、いっせいに南進を始め、印度戦線に緊張が走る! これを受け、わが紺碧艦隊および紅玉艦隊は、海上よりアーメダバードを防衛するために、全速力で印度西岸を北上し……。かくして、陸海ともに白熱の印度戦線、佳境に突入す!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊12―日米構和成る』トクマ・ノベルズ・1993年
《照和二十二年九月末、大高首相は土地取引所開設三周年を祝う講演会の席上で記念すべき朗報をキャッチした。ついに米国で三将軍クーデターが成功――。日米両国は本格的に停戦、和睦への道を歩むことになったのである。これにより、世界戦局は大転換期を迎え、日米双方の戦力が、すべて独逸第三帝国に向けられた。一方、ヒトラーも戦局の急変に対抗し、印度戦線への新たなる兵力の派遣を決定した。かくしてシーパワー対ランドパワーが正面から激突する日独一大決戦の火蓋が切って落とされた! 急展開の第三部スタート!!》
【十五句抄出】関根道豊句集『地球の花』
「野郎共」第3号(2019年6月)
「野郎共」(発行:名古屋中学校・高等学校文学部、編集:難波朔矢)第3号(2019年6月)から。
今年、第22回俳句甲子園の審査に行って松山でもらってきた名古屋中学校・高等学校文学部の句誌。
もう辛いものは食べない猫の恋 原田 駿(「安曇野合宿連作」から)
以下、「部員自選句集Ⅰ」欄から1句ずつ。
叩き潰した蚊がまた来た 大野啓祥
その傷を覚えています夏蓬 難波朔矢
草笛や妙なあだ名を付けられて 小林 空
要塞の如きピザ窯雪催 塩崎達也
春眠や電波時計の狂ふ日も 北本晃大
掃除機の持ち手つめたし啄木忌 横井来季
以下、「部員自選句集Ⅱ」欄から1句ずつ。
朝焼けやレコードで聴くパガニーニ 冨田孝太郎
天高し祖父の建てたる一軒家 齋藤壮人
秋風や胡坐をかいてアメジスト 磯部 滉
毳立てるテニスボールや枯野原 木村功汰
山盛りは鬼の嫌がる目刺しかな 三宅航暉
秋風や散歩のために犬連れる 鬼頭孝幸
*
地下道に湧水の痕小晦日 水野大雅(顧問)
みずくらげ宇宙に果てのあるのかも 水野結雅(顧問の息子、小学生)
クリスマス電子レンジに父の皿
【十五句抄出】渡辺政子句集『修二会』
【十五句抄出】吉田林檎句集『スカラ座』
『スカラ座』は吉田林檎(1971 - )の第1句集。序文:西村和子、帯文:行方克巳。
著者は「知音」同人。
咲くほどにこはれてゆくよチューリップ
蝌蚪影とはなれて泳ぎはじめけり
サイレンの半音下がり梅雨に入る
子の夏やサドルを高くしてやりぬ
木洩れ日を掃き寄せてゐる夏袴
避暑の夜の真暗闇を喜ぶ子
議事よりも虹を見てをり十五階
小鳥来る倉庫をカフェに建て替へて
子の寝顔聡し逞し秋灯下
初雪や吾子の応への素つ気なし
蝸牛伸びきつて殻はづれさう
春装や密かに思ふ人あれば
キッチンの片付いてより夜の長き
大いなる雲は急がず初景色
未婚でも既婚でもなく寒茜
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
【十五句抄出】寺澤始句集『夜汽車』
『夜汽車』は寺澤始(1970 - )の第1句集。跋文:依田善朗。
著者は「未来図」同人。
あれは火星これは金星あぢさゐ空間
少年の骨の硬さや春の雷
長女「のどか」と命名
聖書読む樹々に触れたる風のどか
ハードロックカーステレオに夏来る
母とゐてケーキの苺崩したる
選びたる赤きルアーや夏うぐひす
静岡 三句 より
花冷や蛇の骨格緻密なる
初御空映す玻璃戸の陛下かな
浅草のバーに春画や初句会
蛇穴を出でて夜汽車の滑り出す
シウマイを生徒に持たす春の駅
映画館の扉重たき昭和の日
立葵天国の鍵のありどころ
顔を見て出席を取る震災忌
鯛焼を食ふとき路地に隠れけり
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
【十五句抄出】ふけとしこ句集『眠たい羊』
『眠たい羊』はふけとしこ(1946 - )の第5句集。
著者は「椋」「船団」所属。
嘴の痕ある椿ひらきけり
鉄橋の三角三角春がくる
東日本大震災、句を求められたが…… 二句 より
三月のその日を山に遊びゐし
うららかや紀州青石販売所
ゆく春や虎魚が結ぶ口に泡
雀蛾に小豆の煮えてゐる匂ひ
黒蟻の死よ首折つて腰折つて
向日葵の首打つ雨となりにけり
山近く暮らし秋刀魚を焦がしけり
一夜茸なら椿の下に生えてゐる
冬の鵙ダリ売つてより眼の乾き
日が溜まる大根畑の足跡に
悪相といふべき榾のよく燃ゆる
盛籠をはみ出す海鼠買はれけり
製材所の焚火のなんといい匂ひ
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
【十五句抄出】高岡修句集『剥製師』
【十五句抄出】若杉朋哉句集『朋哉句集 二』
「セレネッラ」第20号(2019年9月)
ネットプリント誌「セレネッラ」(編集:中島葱男)第20号(2019年9月)から。
この号をもって終刊とのこと。
流星や螺鈿細工の硯箱 金子 敦
水飲めばなくなる眠気ちんちろりん 中山奈々
火を我に煙を天に大文字 中島葱男
「紫雁」第17号(2019年9月)
開成学園俳句部の部誌「紫雁」第17号(2019年9月)から、全員一句ずつ。
重田渉(高一)は今年の第22回俳句甲子園の個人最優秀賞句《中腰の世界に玉葱の匂ふ》の作者。
以下、高三の作品。
ぶらんこを降りれば昏き池袋 関口礼児
以下、高二、高一の作品。
寒明や藥罐の底の鈍き金 佐々木柊
風葬のごとく虫籠吊られけり 笹田陽太
黄昏のはたてをひらく冷蔵庫 重田 渉
霧笛いま仔を売られたる馬のごとく 垂水文弥
以下、中三の作品。
四阿は舟のしづけさ秋海棠 荒川力也
弦楽器みな飴色に日脚伸ぶ 佐伯冴人
みづうみの如く凪ぎたる受験かな 佐々木拓実
成人の日に強風を賜りぬ 佐藤 颯
夏帽を落とした町にやつて来る 鈴木ヒロアキ
新鮮なひかがみあまた運動会 中川収三
秋雨や平均台に傷あまた 宮下春希
観覧車そのおほかたは月のもの 谷田部慶太
掛けてみて白帆の如き初暦 山崎勇獅
少年の石を匿ふ花野かな 根木波輝
以下、中二の作品。
みほとけに水晶の目や山眠る 鈴木丈句朗
大河へと飛び込む心地西瓜食ふ 児玉悠希
甲虫電子回路のやうな腹 鈴木智仁
以下、顧問の作品。
冷蔵庫父の時間を照らしけり 佐藤郁良
神社より寺の和金の肥えにけり 近藤 剛
初晴や口実もなく手を握る 石丸恵彦
【十五句抄出】松林尚志句集『山法師』
『山法師』は松林尚志(1930 - )の第3句集。
著者は「木魂」代表、「海原」同人。
暖かさうなマダム羊が初夢に
理髪師に転がさるる首冷房に
白き夢白きイルカも来てゐたり
ケータイにある小さき窓春時雨
胴体がずんずん進む夏の川
校庭は声のごつた煮立葵
夏萩や尊氏蟄居せし古刹
一蓮華一赤子なり緑浄土
オランウータンしよんぼり枯草むしりをり
ビルの間にスカイツリーは海市なり
ステンドグラス古りし茶房や梟ゐて
慶應病院に金子兜太さんを見舞う 二句 より
ベッドの兜太と一期のシャッター冴えて鳴る
幻獣辞典ボルヘスにあり冬銀河
磯に踏む牡蠣殻昆布霞む富士
暗黒舞踏といふ戦後あり蝕の月
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。
【十五句抄出】鍵和田秞子句集『火は禱り』
【十五句抄出】寺田京子『寺田京子全句集』
『寺田京子全句集』は寺田京子(1922 - 1976)の4句集『冬の匙』『日の鷹』『鷺の巣』『雛の晴』をまとめたもの。解題:江中真弓。後記:宇多喜代子。栞文:林桂。
著者は「水声」「水輪」「壺」「寒雷」「札幌文学」「杉」同人。
以下は有名句《未婚一生洗ひし足袋が合掌す》《日の鷹がとぶ骨片となるまで飛ぶ》以外から抄出。
ダリヤの市敵のごとくに大鏡
旱の夜おんなじ貌の鰈焼く
父が寝し闇より生れて髭ふる虫
顔入れて押入さみしき朝の蝉
涸ダムなり朝鴉飛ぶ真つ逆さま
マッチ擦つて真昼があおし魚市場
曇る五月出発すつくとちんどん屋
灯の寒流死はたやすさのハンカチ飛ぶ
主婦の名が縛す友の背鷹が飛ぶ
正月終る女の家の急階段
トンネルに梯子棲みいて冬の旅
売文のめくそはなくそ冬レモン
暗闇に剃刀を置く夏の杉
友の死の夏あかつきのブルドーザー
鷺の巣や東西南北さびしきか
※本書は編者より寄贈を受けました。記して感謝します。
【十五句抄出】金子兜太句集『百年』
『百年』は金子兜太(1919 - 2018)の第15句集(遺句集)。後記:安西篤。
声美し旅の隣の姫始め
床の間に大蜘蛛垂れて羽黒山(はぐろ)なり
朝食べるバナナ亡妻笑いおる
秩父盆地皆野小学校はわが母校。そこを訪ねて尿瓶を語る 五句 より
後輩と尿瓶に冬のひかりかな
津波のあとに老女生きてあり死なぬ
積乱雲避難所にうずくまる老女
白寿過ぎねば長寿にあらず初山河
花は葉に鹿撃たれ谷川に墜ちる
干柿に頭ぶつけてわれは生く
山径の妊婦と出会う狐かな
雲巨大なりところ天啜る
集団自衛へ餓鬼のごとしよ濡れそぼつ
愛猫シン穴に入る蛇見送りいし
人よ生き他を謗(そし)り且つ満たされず
陽の柔わら歩ききれない遠い家
※本書は編者より寄贈を受けました。記して感謝します。
【雑録】このひと月くらいに読んだ本の書影 Part77
装幀として懐かしいものは眉村卓と筒井康隆の再読を除くと今回はそんなになかった。
新城貞夫『前奏曲―魂には翼がある』、日原正彦『詩集 降雨三十六景』、八木幹夫『郵便局まで』はそれぞれ版元または著者から寄贈いただきました。記して感謝します。
赤江瀑『獣林寺妖変』講談社文庫・1982年
《関ケ原合戦のおり、千数百名の軍兵の血を吸って落城した伏見桃山城。その床板を使った洛北の禅寺・獣林寺の血天井を学術調査中、ルミノール鑑定にひときわ青く燃えたって発見された、新しい血の斑痕……歌舞伎の魔に挑み、燃え朽ちていった魂の咆哮を描く表題作のほか、「ニジンスキーの手」「禽獣の門」「殺し蜜狂い蜜」の阿片的魅力の代表作三篇も収めた、伝奇ロマン傑作小説集。》
収録作品=獣林寺妖変/ニジンスキーの手/禽獣の門/殺し蜜狂い蜜
花果唯『BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました』ビーズログ文庫アリス・2017年
《男子高校生・天地央は気がついた。ここが前世の自分=腐女子が愛したBLゲームのクリア後の世界で、しかも主人公の弟に転生したことに! 兄の情事を覗けると喜ぶも、失恋した攻略キャラ達のその後も気になる! 彼らの新しい恋(ただしBLに限る)を見守ることこそが我が使命! と燃える央……だが気づけばクーデレな新キャラ相手にイベント発生?? 生BLを拝めるご褒美ポジが一転、メインキャラに昇格!!? 》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師な件』ファミ通文庫・2012年
《『グリンダ・ドイルを廃業する』そんな言葉を残して、“万能の天才”グリンダは、同盟国への派遣を目前に失踪した。このままでは国際問題に――というわけで身代わりとして白羽の矢が立ったのが、グリンダの双子の弟、つまりこの僕、シャールだった。いや無理! 僕男だし! 天才の姉と違ってニート予備軍の浪人生なのに! 抵抗も虚しく女装させられ、同盟国の王様一家の家庭教師をやることに……!? ファンタジー家庭教師コメディ待望の文庫化!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師な件2』ファミ通文庫・2012年
《失踪した双子の姉、"万能の天才"グリンダ=ドイルの替え玉として、女装してエーレン王室の家庭教師をするはめになった僕、シャール(♂)。紆余曲折の末、王子や姫たちと仲良くはなれたけど、今度はなんと竜樹王子とイケメン騎士ギルマーから、同時に愛の告白をされてしまう! 突然のモテ期が――って男にモテても嬉しくない! 聖羅からは白い目で見られるし、アニスはお泊まりにやって来るし、一体どうすれば――!? ファンタジー家庭教師コメディ第2巻!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師な件3』ファミ通文庫・2013年
《天才の姉・グリンダの替え玉として、女装して同盟国エーレン王室の家庭教師を務めている僕、シャール(♂)。濡れ衣を着せられたアニスのため、密室事件の謎を解くハメになったり(僕に名探偵役は無理!)、子供たちを引率してお祭りに行くことになったり(何故か僕を巡って竜樹王子と聖羅が張り合ってる!?)、今日もトラブルの種は盛りだくさん! けれどそのお祭りには、本物のグリンダが現れるという情報があって――。
ファンタジー家庭教師コメディ、第3巻!!》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師な件4』ファミ通文庫・2013年
《女装しての替え玉家庭教師生活にも慣れてきた僕、シャール。そんな僕を男と知らず慕ってくる竜樹王子に隣国から縁談が!? 是非これを機会に、真っ当に女の子と恋愛して欲しい。応援する気満々だったけど、やってきた姫が――うわぁ、アレ、何!? 竜樹王子は真っ青だし、双子達は僕を巻き込んで撃退作戦を練り始めるし、ど、どうしよう!?
聖羅との甘々短編「エーレン王室式・新婚さんゴッコ」等、番外編も盛り沢山のファンタジー家庭教師コメディ、第4巻!!》
宇田賢吉『電車の運転―運転士が語る鉄道のしくみ』中公新書・2008年
《時速一〇〇キロ以上の速さで数百トンの列車を率いて走行し、時刻通りにホームの定位置にピタリと停める......。このような職人技をもつ運転士は、何を考え、どのように電車を運転しているのだろう。また、それを支える鉄道の仕組みとはどのようなものだろう。JRの運転士として特急電車から貨物列車まで運転した著者が、電車を動かす複雑精緻なシステムと運転士という仕事をわかりやすく紹介する。》
新城貞夫『前奏曲―魂には翼がある』コールサック社・2019年
《一九六五年当時の沖縄は米軍占領下であり、沖縄戦の悲劇に加えて膨大な米軍基地に取り囲まれながら、新城氏はニーチェを手掛かりにして国家や社会や宗教などの支配から逃れようと、根源的な自由を「前奏曲」を響かせるように軽やかに書き記していたに違いない。(鈴木比佐雄「解説」より)》
神香うらら『白薔薇王子~意地悪従者と淫らな呪い~』プリズム文庫・2011年
《ブランドル王国の第三王子・ニコルは、白薔薇を思わせる美貌の青年。最近の密かな悩みは、幼い頃から仕えてくれている側近のランスロットを無性に意識してしまうこと…。そんなある日、旅先の森で『乙女の乳首』という可憐な花を手折ったニコルは、魔女に呪いをかけられてしまう。それは、夜ごと乳首が疼き、男性のあるものをかけなければ鎮まらないという破廉恥極まりない呪いで…❤》
野村美月『ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師な件5』ファミ通文庫・2014年
《女装&替え玉な家庭教師生活ももう半年ほど。生徒たちに懐かれたのは嬉しいけれど、聖羅が毎日メイド服を着て、お茶を淹れてくれるようになったのは絶対マズイ! それ以外にも、真面目で一途過ぎる竜樹王子に、ブラコン気味の更紗姫、その更紗姫にベッタリな織絵姫、お母さんっ子の真王子……特定の相手しか目に入らない問題児ばかり。彼らの世界を広げるため、“先生”として一計を案じた僕は――。ファンタジー家庭教師コメディ、好評第5巻!》
ライアル・ワトソン『アフリカの白い呪術師』河出文庫・1996年
《探検家の書き記した旧きアフリカに憧れ、十六歳で未開の奥地へと移り住んだイギリス人がいた。エイドリアン・ボーシャというその青年は、てんかん症とヘビ取りの才能が幸いして、白人ながら霊媒・占い師の修行を受け、アフリカの内なる伝統に迎え入れられた。
人類の三〇〇万年の進化を一人で再現することとなった男の驚異のドキュメント!》
辻真先『酔いどれ探偵李白―幻説楊貴妃』トクマ・ノベルズ・1994年
《唐は玄宗皇帝の治世。開元の治とうたわれた名君も政に倦み、楊貴妃にうつつをぬかす始末。悪宰相・李林甫の死因に毒殺説が流れ、警備にあたっていた方術士・葉法善に嫌疑がかかった。汚名をすすいでほしいともちかけられたのは詩仙・李白だ。宮廷を追われ、江南を旅していた詩人は再び長安の土を踏み、調査に乗りだす。厳重な護衛下にあった宰相を誰がどうやって殺害したのか? 折しも安禄山の乱が王朝を震撼させる。殺人事件の背後に、唐を滅亡へと導く大陰謀が隠されていようとは!! 酒豪詩人・李白の名推理!》
栗城偲『後輩が目を合わせてくれません』プラチナ文庫・2016年
《映研の後輩・主税と目が合わない。仲が良かった後輩の態度に落ち込む航流は、彼からの突然の告白に茫然とした。が、やっぱり目が合わない! 問い詰めると、好きすぎて緊張して顔が見られないと言う。呆れる航流だったが、抱きついて互いの顔が見えなければ平気と知り、慣れるまでくっついて過ごすことにした──けど、だからって電車の中でケツ揉むか!? このムッツリえっち!》
水上勉『爪』中公文庫・1975年
《縁日の夜、東京の下町から失踪した若い女性の死体が、北近江の余呉湖・で発見された。その爪を彩るピンクのマニキュアは何を物語るのか――終戦直後の混乱した社会状況を背景に、謎ときの興味をこえて深い人間の業を描く推理小説の傑作。》
西村寿行『汝は日輪に背く』徳間文庫・1987年
《一匹狼のヤクザ宮田雷四郎は、母の静代にせがまれシルクロードへと旅立ったが、数日後、静代はチベット山中で半狂乱のところを保護された。「雷四郎が殺された。警視庁の白川さんへ」とだけ言い残してだ。
かつてボルネオでの日本人誘拐事件で雷四郎とも知り合いだった白川と医師の剣持は仇を討つべくネパールへ飛んだ。だがそこは、密教と性交秘画の、妖しい禁断の地であった……。鮮烈のバイオレンス巨篇。》
水上勉『静原物語』中公文庫・1975年
《昭和十六年四月。桜の花のほころび初める洛北静原の里で、ひとりの男の死を追って、ひとりの女がみずからの若いいのちを断った――。蛇性の化身に渦巻く〈愛〉と〈業〉の修羅を描いて、水上文学に新しい境地をひらいた意欲作。》
かんべむさし『奮戦!リストラ三銃士』徳間文庫・2000年
《早期退職優遇制度で会社を辞めたが、再就職先の話が宙に浮いてしまった、大手電機メーカー課長の平田。上司にセクハラを受け、やむなく退職した春名さち子。高校中退、転職歴無数、ようやく落ち着いた印刷会社は社長が夜逃げ、バッグ一つで大阪から上京してきた長吉。そんな三人が出会って考えた。自分たちで会社を作り、いろいろなアイデアを売り込もう。しかし……。抱腹絶倒、長篇ユーモア小説。書下し。》
ウイルヘルム・ヴォリンガー 『ゴシック美術形式論』岩崎美術社・1968年
《ヨーロッパ中世に花開き、大聖堂で頂点を極めた「ゴシック美術」はどのように産み出されたのか? ドイツを代表する美術史家が、芸術を創造する人類の根本的衝動にまで遡り、ゴシックの内奥に潜む情念を鮮やかに描き出す。『抽象と感情移入』に続く主著。》(「BOOK」データベースより)
四方田犬彦『「かわいい」論』ちくま新書・2006年
《世界に冠たる「かわいい」大国ニッポン。キティちゃん、ポケモン、セーラームーンなどなど、日本製のキャラクター商品が世界中を席巻している。その市場規模は二兆円ともいわれ、消費社会の文化商品として大きな意味を担うようになった。では、なぜ、日本の「かわいい」は、これほどまでに眩しげな光を放つのか?本書は、「かわいい」を21世紀の美学として位置づけ、その構造を通時的かつ共時的に分析する、はじめての試みである。》
菅野昭正編『九鬼周造随筆集』岩波文庫・1991年
《『「いき」の構造』で知られる哲学者九鬼周造(1888‐1941)は、また情趣に満ちた味わい深い随筆の書き手でもあった。敬愛していた岡倉天心の思い出と母への慕情とが幼い日の回想のうちに美しく綴られた「根岸」「岡倉覚三氏の思い出」、偶然論を語りながら人生の無常に思いをはせる「青海波」など、24篇を精選した。》
水上勉『沙羅の門』中公文庫・1977年
《琵琶湖畔の古刹の一人娘千賀子が男友達とのゆがんだ愛に走ったのも、父と若い継母との同衾中をかいまみたからだったか――沙羅の木の花の香に殉じた奔放な女の底深い業を美しく哀しく描く長篇。》
カント『啓蒙とは何か』岩波文庫・1950年
《『プロレゴーメナ』を書き終えてから10年の間に発表した彼の歴史哲学に関する小論5編を収める。啓蒙とは何か、人類の進むべき道、人類の起源、世界の終わり、理論としては正しいが実際には役立たぬという批判などの興味あるテーマを、かれの哲学的原理を応用、一般の読者を対象に解りやすく論じたものである。》
古田博司『ヨーロッパ思想を読み解く―何が近代科学を生んだか』ちくま新書・2014年
《なぜヨーロッパにのみ、近代科学を生み出す思想が発達したのだろうか。それは「この世」の向こう側を探る哲学的思考が、ヨーロッパにのみ発展したからなのだ。人間の感覚器官で接することのできる事物の背後(=向こう側)に、西洋人は何を見出してきたのだろうか。バークリ、カント、フッサール、ハイデガー、ニーチェ、デリダらが繰り広げてきた知的格闘をめぐって、生徒との10の問答でその論点を明らかにし、解説を加える。独自の視点と思索による、思想史再構築の試み。》
磯崎新『造物主義論―デミウルゴモルフィスム』鹿島出版会・1996年
《デミウルゴスは「ティマイオス」においては造物主、グノーシス主義においては神の他者、フィチーノにおいては芸術家、フリーメーソンでは大宇宙の建築家、ニーチェにおいてはツァラトゥストラと姿を変えて語られてきた。そして今日ではテクノクラートのなかにエイリアンのように寄生しているようにみうけられる。自らが産出した『建築』を、その出自と振舞いを確認するために召換されたにもかかわらず、ときに、デミウルゴスは『建築』を扼殺しようと試みもする。》(「BOOK」データベースより)
松村秀一『ひらかれる建築―「民主化」の作法』ちくま新書・2016年
《ケンチクとタテモノ―─。近代的夢の象徴としてイメージされてきたケンチクと経済行為として営々と生産されてきたタテモノ。一九七〇年代半ばに「建築家」を志して以来、つねにそのあいだで葛藤してきたが…。二一世紀、局面は大きく変わった──。居住のための「箱」から暮らし生きるための「場」へ。私たちの周りに十分すぎるほど用意された「箱」は今、人と人をつなぎ、むすぶ共空間<コモン>を創造し、コミュニティとなる。これからあるべき「ひらかれる建築」の姿を、「民主化」をキーワードに、関わった「三つの世代」の特徴と変遷から描き出す。》
陣内秀信『東京―世界の都市の物語』文春文庫・1999年
《世界第二の経済大国、日本の首都・東京。ハイテクの先端をいくこの都市は、またアジア的な巨大な迷宮でもある。江戸、明治、大正、昭和、平成と400年に及ぼうとする首都としての歴史がいまも生き続けている。高層ビルの谷間で垣間見る江戸の風情、下町に息づく「水の都」の伝統……。歴史、文化を通して捉え直す東京再発見ガイド。》
浅倉久志編『世界ユーモアSF傑作選1』講談社文庫・1980年
《ほんのりとしたユーモアをちりばめて宇宙のかなたから送られてきた笑いのSFカクテル16種――「終わりの始め」「ベムがいっぱい」「美味球身」「魔王と賭博師」「おれと自分と私と」「かわいそうなトポロジスト」など、バラエティーに富んだ作品群から、きみ好みのすてきな“笑い”を発見しよう。》
収録作品=終わりの始め(チャード・オリヴァー&チャールズ・ボーモント)/ベムがいっぱい(エドモンド・ハミルトン)/美味球身(ラリー・アイゼンバーグ)/魔王と賭博師(ロバート・アーサー)/おれと自分と私と(ウィリアム・テン)/かわいそうなトポロジスト(シリル・M・コーンブルース)/呼吸のつづく狒々がいて(アーサー・エディントン)/ノーク博士の島(ロバート・ブロック)/コンピューターは問い返さない(ゴードン・R・ディクスン)/宇宙三重奏(ロバート・シェクリイ)/主観性(ノーマン・スピンラッド)/コフィン療法(アラン・E・ナース)/ガムドロップ・キング(ウィル・スタントン)/夢は神聖(ピーター・フィリップス)/進めや、進め!(フィリップ・ホセ・ファーマー)/女嫌い(ジェームズ・E・ガン)
笹沢左保『結婚関係』集英社文庫・1980年
《愛想の尽きた夫を殺した40代の妻、秘かにアパートを借りて孤独を楽しむ30代のエリート亭主、姑に苛立ち浮気をする20代の若妻。そんな3人に突然、脅迫の電話がかかってきた。しかも同一人物かららしい。何の関係もなかった3組の夫婦が、意外な糸で結ばれてゆく……。さまざまな結婚を通レ信頼し得る愛の型を問う異色サスペンスロマン。》
小此木啓吾『エロス的人間論―フロイトを超えるもの』講談社現代新書・1970年
《現代ほど「人類の進歩」が問われている時代はない。世代の断絶、家族の解体、歴史意識の喪失、自然の破壊など高度に発達した現代社会は、多年にわたる人間への信頼を無残にもうちくだいてしまったかのようにみえる。そんなとき、人間はいかにあるべきなのだろうか。本書はフロイト、ライヒ、フロム、マルクーゼなどの人間分析の歴史をたどり、いままでの社会を支えていた合理主義的自我人間ではなく、人類誕生以来ずっと存在していた自然人に注目する。その自然人という見方、すなわちエロス的人間観こそ、繁栄と進歩という幻想のなかで、生の不安におののく現代人に新しい方向を約束する。》
荒巻義雄『紺碧の艦隊13―印度洋地政学』トクマ・ノベルズ・1994年
《現在、印度戦線は、一気に錯綜しつつあった。虎狩作戦実施の電文を受けた紅玉艦隊から発進した新型奇襲機・鮫龍が、ロンメル控えるデリー司令部の空襲に大成功。見事に中枢を麻痺させたことにより、敵前線部隊は情報的に完全に孤立化した。今こそ、秘本兵法『三十六計』の第六計“声東撃西”の策の出番である。東に声んで西を撃つ――敵を攪乱し、錯覚させるために、後世日本陸軍が仕掛けた妙手とは……? ますます激化する日独攻防戦、ついに陸上戦に突入す。超人気の〈紺碧〉シリーズ第13弾!!》
荒巻義雄『紺碧の艦隊14―史上最強内閣』トクマ・ノベルズ・1994年
《照和二三年五月三日――後世日本では、再び総選挙が実施された。任期を残してのこの国政選挙は、大高首相の決断によるものである。長期安定化した政権にもかかわらず、あえて衆議院を解散したのは、日米講和成立により、後世世界大戦の戦局が第三段階に突入した、と判断したからである。根本的な世界構造の大変革の到来を皮膚で感じた大高は、来るべき新局面に備えるために、国家の再構築を行なおうというのである。数日後、国民の圧到的支持を得て選挙に大勝利し、発足した史上最強の新内閣の全貌とは……?》
荒巻義雄『紺碧の艦隊15―印度南方要塞』トクマ・ノベルズ・1994年
《照和二十三年七月――激務の疲れを癒やすために箱根の別荘に来ていた大高首相は、太正五年に発行された『日本征服』という独逸の翻訳書に見入っていた。四半世紀以上前に書かれた奇書の予言が、現在の後世世界に酷似していたのである。しかも独逸がいずれソ連と同盟する可能性があることすら示唆していた。さらに深まる戦局の難解さと世界平和への道のりの遠さを実感していた矢先、ロンメルが直接、指揮をとるため、デリーからバンガロールに到着したとの報らせが入り……。ついに南印度で日独大激突、勝敗はいかに?》
眉村卓『天才はつくられる』角川文庫・1980年
《恐るべき天才少年少女のグループがあらわれた! 彼らはテレパシーを修得し、念力で自由に物を動かしテストでも抜群の成績を修めている。が、彼らは、何か巨大な悪の企みを抱いているらしい……。
ある日、ひょんなことから、ちょっぴり超能力を身につけた史郎にも、グループに入るように誘いがきた。そして、断わった史郎に、彼らは命を取ると脅しをかけてきたのだ。史郎は、友人の敬子とともに、天才グループと断固闘う決意を固めたが……。
スリルあふれる、学園SFサスペンスの傑作。「ぼくは呼ばない」を併録。》
収録作品=天才はつくられる/ぼくは呼ばない
眉村卓『出たとこまかせON AIR』角川文庫・1979年
《さあさあ皆さん始まりだよ!
ぶっつけ本番、出たとこまかせ!
ワルのり、気まぐれ、苦しまぎれ!
突飛で変てこりんで愉快なお話!
――そばつゆ甘いかしょっぱいか?
――過去は何色? そして未来は?
――金言、格言をウラから見れば?
SF的発想と、ユニークな知識が満載されたこの一冊で、あなたは楽しみながらインテリジェンスを磨くことができる。さあこの「出たとこまかせON AIR」に、ピタリとチャンネルを合わせてみましょう。》
筒井康隆『串刺し教授』新潮文庫・1988年
《崖から転落して鉄柵の尖端に串刺しにされた大学教授を目撃したガソリン・スタンドのサーヴィスマンが最初にしたことは? 写真週刊誌時代の未来を予見した作品として「東海道戦争」などと並ぶ表題作。やくざが女学生の言葉で会話し、女学生が中年紳士の言葉で会話し、中年紳士が主婦の言葉で…会話する「言葉と〈ずれ〉」。人間がきつねをだます奇怪至極の「きつねのお浜」など全17編。》
収録作品=旦那さま留守/日本古代SF考/通過儀礼/句点と読点/東京幻視/言葉と〈ずれ〉/きつねのお浜/点景論/追い討ちされた日/シナリオ・時をかける少女/退場させられた男/春/妻四態/風/座右の駅/遙かなるサテライト群/串刺し教授
筒井康隆『48億の妄想』文春文庫・1976年
《この地球上に住む48億の人間のうち、いったい正気なのは誰か。少なくともその大部分が同じ幻想に捉われているとしたら、それを描く新しい「共同幻想論」を書くのが現代の文学者の務めであろう。テレビ絶対の時代、テレビに踊らされる人間、マスコミを痛烈に諷刺した筒井康隆の画期的な処女長篇小説。 解説・平岡篤頼》
荒巻義雄『紺碧の艦隊16―敗戦の予感』トクマ・ノベルズ・1995年
《照和二十四年六月――大高首相は日本の負ける夢を見た。このところ、頻繁に同じ夢を見ていた。正夢か、逆夢か。願わくは逆夢であってほしいが、先のことはわからない。国内・国外ともに問題が山積しており、解決への道は程遠い。いずれにせよ、近いうちに国民国家の時代は終わるというのが、大高の見通しであった。国民国家が歴史のある発展段階で終わらざるをえないのは、国民国家の宿命でそれが戦争の原因になるからである。時代は急速に暗雲たちこめり先行きがまったく見えない状況――大高の選択はいかに?》