2019年8月
書肆麒麟
『鈴の中』は山内将史(1958 - )の句集。
著者は元「琴座」同人。
蝶落ちて水面の錆ひろがりぬ
葉裏より表に出でしきりぎりす
黒揚羽娶りし友と昼寝かな
野球さへ柳に見れば淋しかり
百合にたかる揚羽三頭虎の如し
炊きたての飯で火傷す秋の風
逆輛の機関車しづか雲の峰
屋根裏の蛇にかしづく一家族
星月夜少女が金属バット振る
流氷に乗りて流るる椅子一脚
おほよそは人語を話す桜かな
水爆の夢を見てゐる紋白蝶
風花や兄のペン画の紫電改
飛行機の揚力淋し桃の花
夏の海へ少女スプーンのやうに入る
※本書は著者より寄贈を受けました。記して感謝します。