【十五句抄出】大牧広句集『朝の森』
2018年11月ふらんす堂 『朝の森』は大牧広(1931 - )の第10句集。 著者は「港」主宰。 自省としよりを演じてゐぬか花莚 老人施設よりの歌声敗戦日 順送りの焼香の列秋彼岸 高官は真榊が好き日本の冬 高官の氷の笑みに風邪こじらす 東京が魔都へと冬日沈みゆく 暖房の無き句会てふたまにある 金銀を売らぬかといふ初電話 人の名をかくも忘れて雲の峰 古代より夕暮はあり芒原...
View Article【十五句抄出】井原美鳥句集『分度器』
2018年12月文學の森 『分度器』は井原美鳥(1949 - )の第1句集。序文:能村研三、栞文:相子智恵。 著者は「沖」同人。終刊まで「握手」同人。 プリズムの光全し秋の風 しはぶいて針穴遠くしたりけり マンホールの蓋の花鳥図仏生会 なにがなし飯炊く義士の日でありぬ けふの木の芽あすの木の芽と湧きにけり 一本に見ゆる煙突初景色 福藁や日は産土へ廻り来る 梟に和したくて吹く壜の口...
View Article【十五句抄出】山本あかね句集『緋の目高』
2018年11月ふらんす堂 『緋の目高』は山本あかね(1935 - )の第1句集。 著者は「百鳥」同人。 頸抱けば眼濡れゐる春の馬 食はれゐる蟷螂の貌しづかなり 読初めの白刃の如き頁かな 許すとは許さるること日脚伸ぶ 薄氷やいまさら乳房再建など バスタブの一人に広し山眠る 初場所や親方衆も美しう 訪へば円座より声ありにけり 培養室青く灯りて神留守に 風花や手斧削りの扉の重き...
View Article【十五句抄出】佐藤りえ句集『景色』
2018年11月六花書林 『景色』は佐藤りえ(1973 - )の第1句集。 著者は「豈」同人。 春宵をわたしの馬がついてくる 夏星に妹与へ七人も 君は少しこはれてゐるね夏の月 大蛸が来て蛸が来て草生える 春雨や都庁の窓は暗すぎる 宇宙では液体ごはん食べてゐる 西方のあれは非破壊検査光 一本に警官ひとり夜の新樹 銀杏を奴隷のやうに拾ひます 俊成の花押に見ゆる空船(むなしぶね)...
View Article【十五句抄出】金丸和代句集『半裸の木』
2018年9月朔出版 『半裸の木』は金丸和代(1943 - )の第1句集。序文:今井聖。 著者は「街」同人。 餓ゑし子の脚がいつぱい曼珠沙華 シベリアが広がる父の羽根布団 水仙の終りは縮み猫通る 古代の武器小より大へ楠若葉 グッピーの消えて液晶テレビ来る 恵まれし子ら降りる駅白木槿 ソフトバンクアコムユニクロガスト冬 公民館の青いスリッパ初夢に 新米をもらふ妻無き男より...
View Article【十五句抄出】茨木和生句集『潤』
2018年10月邑書林 『潤』は茨木和生(1939 - )の第14句集。 著者は「運河」主宰、「晨」「紫薔」同人。 春着着て童女の笑みのおのづから 蒟蒻を植ゑゐる人に生子(きご)貰ふ なかなかの面蜂酒の雀蜂 火蛾払ひつつ密猟の打合せ 三人の婆に子がゐず雛祭 雨柱走れる山の山桜 浪殺し途切れず積まれ雲の峰 毒流し誘ふ輩もゐずなりし 黒壁の大きな空き家秋の蛇 共謀をするごとく出て毒茸...
View Article【十五句抄出】梅元あき子句集『大氷柱』
2018年8月金雀枝社 『大氷柱』は梅元あき子(1939 - )の第1句集。序文:今井聖。 著者は「街」同人。 流氷が近づくほどに乳の張り 午後三時畑の父母に海霧迫る 大根を抜くや海面盛り上がる 雪解風バケツで届く馬肉塊 晩秋は母は漬物鉈で切る ルイベ削ぐ母の身丈の台所 薪ストーブ周りに明日の靴並べ 湿原にバス停一つ日脚伸ぶ 野の馬に二度逢ふ春の日本海 我に見え夫には見えぬ大西日...
View Article【雑録】このひと月くらいに読んだ本の書影 Part67
11月は都内と往復する用が多かったせいか、後半どっと疲れて、読めた冊数も30冊を割り込んでしまい、25冊。 片山壹晴『名言を訪ねて―言葉の扉を開く』は版元から寄贈いただいたもの。記して感謝します。...
View Article【十五句抄出】福田鬼晶句集『リュウグウノツカイ』
2018年11月ふらんす堂 『リュウグウノツカイ』は福田鬼晶(1950 - )の第1句集。序文:石田郷子。 著者は「椋」会員。...
View Article【十五句抄出】木内マヤ句集『月のかけら』
2018年11月ふらんす堂 『月のかけら』は木内マヤ(1970 - )の第1句集。序文:福島せいぎ。 著者は「なると」同人、「万象」会員。...
View Article【十五句抄出】佐怒賀正美句集『無二』
2018年10月ふらんす堂 『無二』は佐怒賀正美(1956 - )の第7句集。 著者は「秋」主宰、「天為」特別同人。 大花火首都は眼底さらしたる 父八十七歳誤報出撃せし父にして生身魂 次女暁子 エジプト留学中小春写メール娘(こ)が抱くエジプトの子猫 佐怒賀正美『無二』15 世界クルーズ(二月一日~二十三日) 四十句...
View Article【十五句抄出】白戸麻奈句集『東京(バビロン)の地下鉄』
2018年9月ふらんす堂 『東京(バビロン)の地下鉄』は白戸麻奈(1969 - )の第1句集。序文:山崎十生。 著者は「紫」同人。...
View Article【十五句抄出】橋本薫句集『青花帖』
2018年11月深夜叢書社 『青花帖』は橋本薫(1949 - )の句集。帯文:黒田杏子。 著者プロフィールには「須田菁華に師事 陶工」とのみ記されているが「後書」からすると「藍生」会員。...
View Article【十五句抄出】宇多喜代子句集『森へ』
2018年12月青磁社 『森へ』は宇多喜代子(1935 - )の第8句集。 著者は「草樹」会員。 高々と来て夏蝶の白ばかり初夢の縁者こぞりて吾に向く親を喰う梟を見るだけの旅目の前に羚羊の立つ物語日もすがら金色をなす枯葎恩師みな骨格で立つ花野かな十二月八日のかたちアルマイト老人に老人の影初詣 また八月 八句 より一句汗の身の深みにひそむ火のゆらぎ...
View Article【十五句抄出】高山れおな句集『冬の旅、夏の夢』
2018年12月朔出版 『冬の旅、夏の夢』は高山れおな(1968 - )の第4句集。 著者は「豈」同人。 書影画像は奥付に「通常版とは別にアビコノコの手製本による布製の限定版(5種類、計44部、非売品)を刊行する」とあるうちの1部。 以下の抄出、前書きは略したり略さなかったり。 これがまあコンスタンティノポリスの夕焼なる...
View Article【十五句抄出】高橋龍「人形舎撰句帖」
2018年11月高橋人形舎 「人形舎撰句帖」は高橋龍の選句集。 辞して来し家灯りぬ秋の暮雪嶺去る卓布真白の食堂車 長男死す五才。いすかたも花散る春のあけぼのに二十一箇の桃を投げ込む夢の穴持ち重る姉の乳房や五月雨あぢさゐに姉の児(俺の児)を埋める古池を島耕作は考へる其里程自大鴉至大玻璃板(ポオをでてデュシャンにいたるみちのりや)...
View Article【雑録】このひと月くらいに読んだ本の書影 Part68
先月はシアター・イメージフォーラムでの、アラン・ロブ=グリエ監督作品6本の特集上映を全て見てくることができた。地方の貧困層にとって映画を見に行くというのは一財産飛ぶ大ごとなので滅多にしないのだが、最初の「エデン、その後」で、これは全部見なければと覚悟した。 高岡修『詩集 原始の人』は著者から寄贈を受けました。記して感謝します。...
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